編集王 1 (BIG SPIRITS COMICS)/土田 世紀

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『俺節』『編集王』『同じ月を見てる』の作者、
土田世紀先生が亡くなられた。

この週末は『編集王』を読み返した。

漫画の内容には触れない。

『編集王』では
漫画を文化としてではなく
ただの商品としてしか扱わない売上至上主義の悪役が
各エピソードごとに登場する。
また、元々は純粋なクリエーター、エディターなのに
現実に押しつぶされ、
逆に漫画を食い物にする輩も多く描かれる。
しかし、どのキャラクターも
必ず物語を背負っている。
業を背負っている。
一面的な悪党など土田世紀の漫画には一人もいない。

それがこの漫画の素晴らしいところだ。

僕は『編集王』で宮沢賢治の「春と修羅」を知った。



   けれどもいまごろちゃうどおまへの年ごろで

   おまへの素質と力をもってゐるものは

   町と村との一万人のなかになら

   おそらく五人はあるだらう

   それらのひとのどの人もまたどのひとも

   五年のあひだにそれを大低無くすのだ

   生活のためにけづられたり

   自分でそれをなくすのだ

   すべての才や力や材といふものは

   ひとにとゞまるものでない

   ひとさへひとにとゞまらぬ

   そのあとでおまへのいまのちからがにぶり

   きれいな音の正しい調子とその明るさを失って

   ふたたび回復できないならば

   おれはおまへをもう見ない

   なぜならおれは

   すこしぐらゐの仕事ができて

   そいつに腰をかけてるやうな

   そんな多数をいちばんいやにおもふのだ

   おまへに無数の影と光の像があらはれる

   おまへはそれを音にするのだ

   みんなが町で暮したり

   一日あそんでゐるときに

   おまへはひとりであの石原の草を刈る

   そのさびしさでおまへは音をつくるのだ

   多くの侮辱や窮乏の

   それらを噛んで歌ふのだ

   ちからのかぎり

   そらいっぱいの

   光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ


これまで『編集王』を読んだことのない方は
どうか手にとって頂きたい。
これほど泣ける漫画はない。

おそらく土田世紀さん自身が
この宮沢賢治の詩のような矜持をもって
全身全霊でこの作品を描き上げたに違いないからだ。

ご冥福をお祈りします。
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